アレルギー体質。よく病院などで診察、注射等をする際に聞かれる言葉です。
その仕組みは私には分かりません。持って生まれた体質であり、その原因とされる物もおそらく明確には分からない症状です。
数多の食料品の中でその方にとって、摂取、または触れる事から湿疹が出たり体調不良となる、それぐらいの知識です。
よく聞かれる物の中でも卵もその一つです。私の知人がそうでしたが、卵を食べる事が出来ない体質の方はこの世にはいます。
卵自体もそうですし、卵が入った食品も同じように食べれません。
ケーキ、クッキー、パン類にしても、僅かでも卵を使用していればその方はそれを口にする事は出来ません。
最近、ニュースで聞いた話です。見かけは卵にしか見えないのですが、卵ではない食品が開発されたそうです。
大豆から作られた湯葉をベースにスクランブルエッグ状の物、そして卵黄の液状の物もお酢を使用し作られました。
卵ではない卵にしか見えない物。似て非なる物の代替物。卵を摂取できない方でも卵の風味や味わいを感じる事ができます。
すごい事だと自分は感心しました。食べる事を諦めていた人でも卵の触感、味覚を感じる事が出来る事に。
また、同じくアレルギーに関しての話ですが、それは食材とは別の物です。食物ではなく金属。金属アレルギーに関しての事です。
この世には金属に触れると、かぶれや湿疹などの症状が起こる方もいるとの事です。それ故に、うかつに金属には触れられない。
ですが女性が一生に一度、その身に金属加工された装飾物を付ける時があります。エンゲージリング。結婚指輪です。
これはニュースではなくドラマで見たフィクションの話です。ある男性がいました。彼には恋焦がれた女性がいます。
ある日、ある時、二人は出会います。時が流れ二人は友人として話もはずみ気の合う間柄になりました。
男性は次第にその女性の事を友人としてではなく異性として意識し始めました。そしてある時、ついにその女性にプロポーズをしようと決意しました。
それは彼としては一世一代の決断だったと思います。彼は彼女に指輪を渡し気持ちを伝えようと決意しました。
ですが彼女には公にしたくはないある秘密がありました。彼女は生まれながらにしての金属アレルギー体質で指輪をはめる事はできないという事実です。
その事は彼女にとってコンプレックであり恋愛に関しても奥手になった理由の一つだったようです。
その事を彼は、彼女とのこれまでの会話の中で知っていました。でも彼女に指輪を渡して一世一代のプロポーズをしたい。
しかし彼女はリングをはめる事が叶わない。それでも彼は彼女を好きになり生涯の伴侶としたい気持ちが強くありました。
そんな彼に救いの手が舞い降りました。金属加工会社の営業の方が、ひょんな事からその事を知りそして彼にこう提案しました。
「チタンで指輪を作りませんか」と。
チタンは空気に触れると酸化し、金属の要素が消える物だそうです。そのチタンを使用し指輪を作ってみては如何でしょうか?と。
彼はその提案に一縷の望みを託しました。デザインなども会社の方と何度も話し合い、試行錯誤の上に指輪は出来上がりました。
その指輪を手に、彼は彼女にプロポーズしました。彼女はリングを前に戸惑い困った様子でした。彼はチタンの性質を彼女に説明しました。
「これなら君の指にも収まります。どうか僕と結婚して下さい」
長い沈黙の後、「はい」、その言葉だけを彼女は口にしました。その後の事は自分は知りません。いえ、そもそもフィクションの話ですし架空の事柄です。
アレルギーという、未だその全てが解明されてはいない分野の事柄です。そして私がここで取り上げたいのは、アレルギー云々の事という訳ではありません。
『代替物』。何かの代わりになるそれに類した、別の何か。原油の代わりの電気エネルギーや水素で動く、車、バイク等のモーティブの出現。
それまでとは異なるそれまでと同等、或いはそれ以上のスペックを持つ別の何か。或いはそれは有機物のそれとは異なる、精神的な物かもしれません。
短距離走は不得手だけど、長距離走なら人並みに出来る。数学が苦手な人でも社会なら得意、等々。多勢の中で個々の得意分野はそれぞれに異なると思います。
ですが、各々が出来る事を出来る形でして、それが結果に結びつけばそれは、『有り』なのかもしれません。
様々な才能の中の個人個人の一つの武器であり、生産性のある有益な物。試行錯誤の上、結果それを見つけられた方は、それはとても僥倖な事のように思います。
アレルギーの話から始まり、最後は精神論のようにもなりました。今、自分が思う事は一つの事が無理でも、個々に何か特化した物を誰しもが持っているのではないか?
『マイナス』な物に代わる『プラス』は気付かないうちに、誰しもすぐ傍にその一欠片を持っているのではないか。
パンドラの箱の中に残された、或いはそれは希望という名の未来への指針。大仰な物言いですが、卵とは異なる物で『卵』を作るというニュースを聞き、何かの代わりになる何かも、探せばそれは見つかるかもしれない。最近、そんな事をふと思いました。