アイドルとは偶像である。そう芸能関係に詳しい識者の方が言われた言葉を覚えています。歌手、俳優、ダンサー等々、著名なアーティストは、遥か遠くにいる敬愛すべき存在だと思います。自分も好きなアーティストや芸能人は沢山います。
60年代、それまであった音楽の常識を一変させたと言われるバンド、ビートルズ。英国、リバプールから生まれた四人組のロックバンドです。先にも言ったようにそれまでの既成の音楽概念を180度、変え、まったく新しい『文化』を作ったとされる若者達。
後世の音楽に携わる方に限らず、演劇界や芸術家の方々にも多大なる影響を与えました。ある意味、ビートルズがいなければ現代の音楽は、いえ、エンターテインメントはまったく異なる物になっていたかもしれません。
ビートルズのメンバーの一人、ジョン・レノンは1980年、12月8日、アメリカのニューヨークの自宅で凶弾に倒れ40歳という年齢でこの世を去りました。彼を撃ったのは熱狂的なファンだったと聞いています。
ジョンの音楽が好きなファンが何故、そのような行為に至ったかは諸説ありますが、最後の所は余人にはわからない事だと思います。
そのアーティストが好き過ぎて、絶対にしてはいけない事をする。それは近年でもそれに近い事件がある事は知ってます。とても残念な事ですが、他人に他人はやはり理解できない事かもしれません。価値観や思想も100人いれば100通りの正解があるのかもしれません。
その後、同じくメンバーのジョージ・ハリスンも2001年、11月29日、肺の病に倒れこの世を去りました。60年代から数多の楽曲を世に出し世界中の人々に感動を与えた、もうこの世には存在しないバンド。
多分、おそらくもう二度とそんなバンドはこの世に現れないと思います。残された数多の曲だけが永遠に聴き継がれてゆく。彼らに限らずそれは人が生身の人間である以上、仕方のない事だと思います。
私は今でもレコードやCDでビートルズの音楽を聴いてます。時代は変わりネットからダウンロードし楽曲を聴く世の中になりました。SNSの台頭から情報の拡散、流布はまさに光の速さそれ以上の現代だと思います。
情報の伝達手段が変わった今、古い音楽を若い人達が聴く機会も多いと聞きます。一つの伝説がスタンダードな物として確立し、年齢を問わずそれに触れる機会がある事は、まさに文化の進化とも思います。
2023年、11月。終結したと思われた東西の冷戦から数十年。今も戦火は世界から消えず、凄惨なニュースは毎日のように聞かれます。世界を襲ったコロナの脅威も収束の傾向へと移行し、それでも世界に混乱の灯は消えない昨今、そのニュースは世界を駆け巡りました。
ビートルズの新曲が発売されるのだと。それを聴いた時、最初はジョンやジョージが生前、作った楽曲がまだあり、それを残されたビートルズのメンバー、ポール、リンゴがなんらかの形にして世に出すのか?最初は漠然とそう思いました。
それは決して間違いではありませんでした。ですがその新曲は従来の物とは制作の過程がこれまでの物とはまったく違うという事を聞きました。
近年、巷でよく聞かれる、AIという言葉。人工的に作られた知能であり、人が作り上げた人を模倣した、でも人とは異なる存在です。生前にジョン・レノンが録音した音源から、AIが必要とされる物のみ取り出し楽曲として組み立てる制作方法。
AIの一つである、ニューラルネットワークが残されたデモ音源の中からピアノや他の『雑音』をより分け、ジョンの発する声のみを取り出し曲として生成する技術。AIが音楽分離させるその技術により、他のメンバーが奏でる声や音楽を重ね合わせそれを一つの楽曲として完成させる。それは現代の今でなければ無し得なかった新しい制作方法だと思います。そしてビートルズの、多分、最後の新曲が生まれました。
その事に自分は感慨深い物を感じます。もうこの世にはいないジョン・レノンの声が鮮明に歌い上げる、これまで世界の誰も聴いた事のないビートルズの新曲。それを2023年の今、聴く事が出来るのはとても僥倖な事だと、十代の頃からビートルズが好きだった自分は思います。
技術の進化から文化の変化が生まれ、そして多くの人々に安らぎを齎す事。その事が人の可能性に無限の未来を感じます。かなり大げさな物言いですが。
その楽曲のタイトルは『Now And Then』と言います。『時折』や『たまに』という意味だそうです。生きていれば、時折、稀に起こるこんなニュースが自分には一つの希望を感じます。